ガートナーによる2009年のCMS格付けで理論武装を

2009年08月20日 00:57

Web担当者Forumの連載「ベンダーよりもCMSに詳しくなる!4つのステップで進めるCMSの情報収集」でもご紹介したCMSの格付けレポート、Magic Quadrantの待望の2009年版が、8月5日に発表されています。

図:GartnerのMagic Quadrant:

日本で販売されているグローバルCMSが世界でどう評価されているのかが分かり、大変参考になります。読むメリットとしては:

  • 最先端のトレンドが分かる。
  • 日本での選択肢が実は偏っていることに気がつく。
  • 長期的な判断ができる。
  • 理論武装でベンダーと有利な交渉ができる。

Magic Quadrantは「早分かり4分割」というような意味で、縦軸が実力(販売、サポート、実績、満足度などの総合評価)、横軸がビジョン力(ニーズ理解度、戦略、将来性、イノベーションなど)を現します。

日本のグローバルCMSに注目

国内で販売・サポートの体制があるベンダーのみに注目し、意訳してみました。

Leaders群・・・実力もビジョン力も十分

  1. 最高のポジションにいるのは、なんとOracle(元Stellent)です。日本でも最近気合が入っていますね。
  2. 次が僅差でオートノミー(Interwoven)、
  3. 実力は落ちるもののビジョンを引っ張る先鋭的なポジションにいるのがSDL (Tridion)です。

Visionaries群・・・小規模ながら先鋭的

  1. あともう少しでLeaders群、という位置でFatWire

Challengers群・・・実行能力はあるもののビジョンを打ち出せていない

  1. Microsoft (SharePoint)は、イントラネットで地味に使われていますね。
  2. 最後がEMC (Documentum)です。結構良いのにほとんど宣伝を見かけません。

日本に参入しているCMSベンダーは、実力と安定性はクリアしているが、新しいビジョンを提示し業界をリードしているかどうかに違いがある、ということでしょうか。

個別のCMSベンダー評価

さらにベンダーごとの長所と短所のところを読んでみます。カッコ内は清水コメントです。

Autonomy Interwoven

長所:

  • WCMのNo.1を目指して業界をリード (日本でも大企業への実績豊富ですね)
  • Autonomyによる買収で、カバー領域が広がりつつある

留意点:

  • DAMなどのECM的な機能はあるものの、機能間の連携がゆるい
  • 競争に勝ち残り現在の地位を維持するには、もっと業界を広げる必要がある

清水コメント:

  • 先日のGearUPに参加しましたが、Autonomyとの統合でさらなる深化がありそう(日本側の体制と顧客は着いてこれるか?)
  • HTMLファイルをまるごとバージョニング&配信管理する魅惑的な方法から脱却し、コンテンツの構造化へシフトできるか?

EMC Documentum

長所:

  • 大企業への導入が堅調 (ドキュメント管理の延長としてですが)
  • コンテンツライフサイクルを幅広くカバーできるオプションが充実
  • 相次ぐ買収でさらに拡大中 (モンスターですね)

留意点:

  • Web CMSの部分はまだ成長過程
  • 開発の難易度が高い

清水コメント:

  • 6.5でWCMとしてもそこそこのレベルに達したのでは?
  • コンテンツの構造管理にこだわり続けるポリシーが好きです
  • 包括的なECMソリューションとしては申し分なく、私も選定して導入したことがあります

Microsoft SharePoint

長所:

  • 安価でシンプルなSharePointがECMの普及を推進したのは事実 (Windowsサーバー導入済みならほぼ無料ですから)
  • MS派のIT部門に好まれている
  • WindowsやOffice、Outlookとの連携で利便性UP

留意点:

  • 基本機能のみで、まだ成長の余地あり
  • 大規模な利用に難があるとの反響を受けて改善中
  • サポート、トレーニング、代理店連携などの体制が弱い

清水コメント:

  • IT部門に任せると要件定義が不十分なまま気軽に導入されてしまいがちなのでご注意

Oracle UCM

長所:

  • よく統合され成熟した製品。Oracleによる買収でさらに広がった
  • Oracleの営業とサポート力で安定力UP

留意点:

  • 買収前の既存CMS顧客を移行させる必要がある (Oracle自前のCMSのことです)
  • 大規模顧客に対してはIBMとEMCの優位性を崩す必要がある

清水コメント:

  • ECM的な使い方もできるWCMとしてはバランスが良いです

SDL Tridion

長所:

  • 多言語、多チャンネル対応は引き続き差別要因
  • XMLで構造化、DITA対応
  • 使いやすく開発しやすい

留意点:

  • 統合的なソリューション能力が弱い
  • 翻訳ソリューションに偏っていて、コンテンツ管理としてはフル発揮できていない

清水コメント:

  • EUで人気のCMS。モノは良いけど日本参入で苦戦中の様子

FatWire

長所:

  • 積極的なパワーがある
  • コラボレーション、解析、システム連動は時代にマッチ

留意点:

  • 戦略的に急成長しているものの、技術面がやや追いついていない
  • パフォーマンスが課題

清水コメント:

  • マーケターのための動的サイト構築プラットフォームとして、日本でもリーダー的存在ですね

まとめ

以上、若干意訳でお届けしました。Own Riskでお願いします。詳細は原文を参照ください。

上記すべて(SharePointを除く)に共通していえるのは、オープンソースのCMSや国産の安価なCMSよりも導入(設計・実装)の敷居が高い、という点です。高くて有名なCMSを選べば将来も安心、と気軽に購入するのは危険で、何が必要なのかをしっかり見極める必要があります。

選択肢:

  • CMS付きホスティング
  • 簡易オンラインCMS
  • ブログやWiki
  • オープンソースのCMS
  • 国産簡易CMS
  • グローバルCMS