Twitter時代の講演設計:#IA2010裏話
講演中にTwitterでコミュニケーションするのはもはや当たり前。#IA2010では、さらに事前の講演設計からTwitterを活用し、反響を見ながらストーリーを組み立ててみました。その知られざる裏話について、記録を兼ねてまとめました。
mak00s 最初に荒くストーリー作って、12回に分けてtweetし、反応見ながら一日1時間x20日でイテレートしました。
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発端は12月の森川さんからの依頼メール。一度の打ち合わせを経て、年明けには特典DVDを収録。事前打ち合わせが盛り上がり、その後一発録りをした。
mak00s 今日は2月のIAセミナー用に長谷川さん・坂本さんとの対談を収録
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基調講演の長谷川さんと、次の自分、今回は登壇しないけどキーマンである坂本さんの立ち位置が見えてきた。
その4日後、収録中に話したことの一部を坂本さんがTwitterでつぶやいた。
bookslope 発注側がWebをアウトソースする理由: (1) わからないからプロに相談したい (2) 面倒くさいから制作プロダクションにお願いしたい この2つしかない。受注側はこれを踏まえて組織やサービスを考えなければならない。(via @mak00s)
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リアルな会話をTweetのように引用しているのが面白い。
ここで思い付いた。
どうせなら自分が対談で話した内容をTwitterで漏れなく再現してみよう。一言ずつ、ゆっくりと。
RTやリプライがあれば、手応えを得られて、講演の成功率を高められる。インタラクティブに組み立てられたストーリー。ソーシャル時代は潜在市場でのbetaテストもカンタン。公式アカウントでムダにつぶやくよりも有益な活用方法ではないか?企業はこういう取り組みもできるハズ。
講演後には、内容をつぶやいてきたことを暴露する。そして、帰宅後にDVDを見て、主張が繰り返されるのを聞く。発信側の時間軸と参加者の時間軸が講演当日を起点に裏返る。媒体と時間をまたがるユーザーエクスペリエンス。
そこで、予約開始直後にまずは宣言:
初日講師の清水です。IA2010開催に向けて、10年間考え実践してきたことをつぶやき続けます。 #IA2010
講演のテーマは、最初は、発注者と制作会社のあり方、にしようと思っていた。そこで最初に:
1. IAに注目が集まるのはWeb制作業界の危機感の表れ?本当に必要なのは改善と効果測定を繰り返すWeb最適化と、それを実現する体制、受発注の在り方。
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と、まずは問題を提起。
次に、IAにばかり過大に期待が集まるのも違うと思い、IAはアジャイルにこなさないと現実的には難しかった、という経験を踏まえて:
2. IAは規模拡大がもたらした必要悪。設計や中間成果物の作り込みは程々に。
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と現実へ揺り戻した。
RTは若干のみ。反響が少ないので、ここで長谷川さんを誘い出すネタを挟む:
3. 10年前の履歴書。誰も知らないからとIAは趣味欄に書いていた。が、面接で反応あり驚いた。その相手は@ahaseg さん
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ここで言いたかったのは、IAなんて10年以上前からあるよ、過大な期待は禁物、ということ。
4. 2000年に入社したUSのWebコンサルにはIAが200人。新卒含む全員のoutputを均質化するために方法論が異常に発達していたが、マジメに守っても平均点しか取れない。
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方法論も昔からあり、あまり進化していない。
ここで、昔のエピソードを面白く紹介:
5. 10年前にUSのWebコンサル本社PRJに参加。20近い役割で分業していたが日本からは何でも屋の自分一人。古風だけどそれがBestだよと笑われたw
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では、どうすればいいのか?
6. ペルソナからエスノまで、方法論は10年前には確立していた。重要なのはマニュアル逸脱術と実践経験?
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断片的なつぶやきでは説得力がないので、思い付き風の疑問形にしておいた。ただし半角。
本当に役立つノウハウはどうすれば貯まるのか。ここは持論であり、Webコンサルをやめて依頼7年間、3社を渡り歩いて実践してきたことを語り始める。
11.いろいろなプロジェクトに関わって楽しいのは最初だけ。同じサービスの改善に継続的に関わる方が得られるものは大きい。
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得るだけでは足りない。ちょうど僕が講演でこうしてお話しているように(と当日に講演中の自分を想像しながら):
7. 自分の体験として語れるノウハウをいかに増やすか。増えない状態は時間の無駄。
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さらに畳みかける。
8. 思い付きで改善できるのはレベルが低い最初だけ。伸び悩んだ後は0.1%のために効果測定やABテストを繰り返すことになる。
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これはちょっと大げさだったか。次は賛同を得られそうな内容にして反響を探る:
9. IAはSEOやCMS、アクセス解析、Webマーケティング、運用改善と統合すると真価を発揮する。しないと蛸壺化。
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いかに価値を出すか、という個人ブランディング的な話になってきた:
10. 出来ない、知らない、気付かないことで価値を出す。枯れたら組み合わせればいい。
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ま、これも大事だな、と。
Web業界の将来に不安を抱いている人も多いのではないか?
というわけで、IAやアクセス解析をなるべく具体化し、できることはいくらでもある、やってみよう!というメッセージを打ち出すことにした。
ところが、当日まであと数日。翌日からUS出張なのでけっこう余裕がない。そこで、途中と最後に決めゼリフのスライドを数枚入れた。あとはトークでカバーできるだろう。
ここで講演当日
いつもは当日の夜に、質問や反応に合わせて修正したPDFを公開してきた。今回は最初からTwitterを活用してきたので、始まる直前にTwitterで資料を先行公開したいと思った。
#IA2010 2番目【アジャイル時代の解析手法】の資料を先に公開しときます。 https://clicky.me/IA2010
話しながらつぶやきを確認し反応するのも面白い。パワポ上で動くTwitterクライアントもある。でも注意力が散漫になるし、今回はメッセージからして直球がいい。具体的なことがキモなので、スライドを減らさずにフルスピードで話した。途中で息継ぎができたのは3回だけ。
そして一時間フルに使い切って終了。
終わった直後に:
12. ユーザビリティに解なし。ISO13407も「改善を繰り返すしかない」。つまり実践あるのみ! #IA2010
(と一ヶ月かけてプレゼン内容をつぶやいてました)
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結論を繰り返しつつ、メディア連動を暴露。その意味は理解されなかったけど、後で(つまり今)まとめて記事にすればいいか。
寄せられた反響
知ってることばかり、なんてdisられていないかと不安な中#IA2010で検索すると、良い反応がたくさん。
megu 清水さんのテストサイト事例がすごすぎる。 #IA2010 2/27
ecoley 楽天清水さんのマトリクスに感心。 #IA2010 2/27
samansa01 楽天の清水さん。楽天の情報設計のヒミツは秘密のままですが、検証用のサイトをしっかり作られており、プロセスも含めてマトリクス化 #IA2010 2/27
tk4 #IA2010 サイトマップは誰のものかで作り方を変える。納得! 2/27
megu 一連のIA設計において何度も手戻りがあった。改善とみなし、戻れるようなフロー、スケジュール、体制が重要 #IA2010 2/27
ymzk4u UIは根拠(想い)を明確にする! #IA2010 2/27
megu でた、清水さんの逆流アプローチ!(必殺技的な) #IA2010 2/27
ID_not_Found 同意 >> 下流につながらない工程はムダ #IA2010 2/27
ecoley #IA2010 ボトムアップアプローチ。インハウスならでは。 2/27
imgdive 面白いな。ウォーターフォールの逆流アプローチ。まずワイヤー、疑問感じたらサイトマップ→ペルソナ作成 #IA2010 2/27
yomos #IA2010 逆流ウォーターフォール。なるほど。デザイナーは考えやすいかもしれない。 2/27
imagedrive この構築プロセスは限定的だけどプロセス発想として面白いなー。考え方と具体的な解決方法(機能)の説明が興味深い #IA2010 2/27
ecoley #IA2010 ダイアグラムわかりやすい。濃いなあ。 2/27
yuichirooo ですね。仮設思考で設計するとクライアントの理解も早い。ラピッドプロトタイピングですね。 RT @papanda 逆流でやるのは仮説をつくるため、かな。 RT @sprmari0 通常の IA 設計(ウォーターフォール)の逆流アプローチ。アジャイル時代の設計方法。 #IA2010 2/27
libkazz めっちゃ面白そう。今度展開してください RT @papanda: 駆け足で講演についていけなくなってきたぞ。。。ワイヤーフレーム、シナリオ、ペルソナ、調査の逆流アプローチがなんで良いのかは分からなかった。後で聞いてみよう。 #ia2010 2/27
megu 発表可能な具体的例を作りたい、というところからここまで作り込んじゃうのがすごいですよね。今後の講演でも使えるからもとはとれそうですが。 RT @IMAGEDRIVE: このスライド作るためにサイト一個運用したのかな・・・ #IA2010 2/27
megu 清水さんのマルチぶりたるや。 #IA2010 2/27
imagedrive 運用改善プロセスを超具体的に見せることによって「情報設計の根拠を把握する」としているわけね #IA2010 2/27
imagedrive 15年運用して5年凍結した場合のアクセス推移を検証してるとか恐ろしすぎる #IA2010 2/27
imagedrive 楽天の清水さんのプレゼン資料を企業担当者と共有したいわー #IA2010 2/27
ID_not_Found 全くだ! > 「わかることではなく知りたいことを(計測⇒解析)」 #IA2010 2/27
ID_not_Found 「すべてはつながっている、分業は必要悪と意識しないとタコツボ化する」 #IA2010 2/27
tk4 #IA2010 標準・方法論は初心者でも同じことができるようにするためのしくみ。マイナスをゼロにするだけ。ちょー納得! 2/27
puchi__puchi 清水さんのノウハウが凝縮。このテンポで凄いですね。立ち上げから運用まで、小規模サイトでは模範になります。おっしゃる通りようやくその先に大規模ウェブサービスがある。 #IA2010 2/27
chibirashka 知る、やってみる、抽象化して、応用する。 by 楽天の清水さん。 うん、大事。確かに。今年はそれをやる年だ!(謎) #IA2010 2/27
sprmari0 @ahaseg さんも @mak00s さんも趣味で #IA をやられている。情報過多時代を生き抜くための本質的なアプローチだからかな。 #IA2010 2/27
nao_ina @mak00s さんの話。めちゃくちゃタメになります。こういう具体的な効果検証メソッドが知りたかった。よくここまでコンパクトにまとめるなぁ。感動しました。 #ia2010 2/27
wantaren 講演、すごくためになりました!さっそく生かしていきたいと思います。 2/27
imagedrive まとめると「なぜ(できる範囲でも良いから)ベストを尽くさないのか」かな #IA2010 2/27
yuipyong …目からウロコ状態です。(わたし学生だからっ) #IA2010 2/27
santa0127 とても勉強になりました! 2/27
2furuta とても参考になりました。ログ解析とIAは関係が深いですよね。 2/27
nao_ina 逆ウォーターフォールモデルはアジャイルだなぁと思った。 RT @mak00s: 「アジャイル時代の(手抜き術)」なのでちょっと違うかも RT @nakano: #ia2010 これアジャイルなのかな? 2/27
kyos 清水さんのスライド素晴らしかった。「実践」ていうのがシビれるんですよね。 2/27
samansa011 ありがとうございました。何事も実践ですね!! 5月講演楽しみです!! 2/27
hi_noriko 清水さんの「方法論はマイナスをゼロにするものでしかない」、そして「自分の言葉で語れる改善体験を増やす」という言葉がピンと来ました。2/28
tlegu 昨日、参加させて頂きました。特に解析⇒最適化の流れを非常に興味深く拝聴させて頂きました。自身も以前、分析をがっつりやっていましたので。 3/1
tnod789 なんとなく思っていたこと。標準・方法論はマイナスをゼロにするだけ マジメに守るとかえって質が低下することも https://asanoken.jugem.jp/?eid=1407 3/4
それにしても、こういう反響は本当に糧になる。こんなお言葉をいただけるなんて、幸せなものです。もっと積み重ねてOutputするぞ、と思いを新たにした次第。
mak00s #IA2010 に参加された皆さま、お疲れさまでした!Twitterのおかげで対話でき、一体感あり楽しく、今後の改善につながります。次は新連載と5月の講演かな?stay tuned.
レビュー記事へのリンク
- 日本ウェブ学会が主催する「IA2010」のキックオフセミナーに参加してきました [SEPARATE KS]
- IA2010キックオフセミナーに参加しました。 [User Design blog]
講演プログラムの中では特に楽天の清水誠様の講演を興味深く聞くことができました。長いご経験の中から得た様々な調査、分析方法をご自身が実践された結果として惜しげもなくご紹介されており、説得力が圧倒的に違います。 またその手法も特別なものではなく、一般に公開されている情報がほとんどで、それを活用して地道に改善を続けていくかどうかという、当たり前のことを淡々とご紹介いただきました。そこが非凡なところと感じ入りました。 - IA2010キックオフセミナーに行ってきました [情報デザイン研究室]
超面白かったのが、2番手の楽天清水さんの「情報設計の根拠を把握する/アジャイル時代の調査・解析手法 」。様々な方向からアクセスを解析すると効果的に検証と最適化が出来るという。 知らず知らず自分で適当にやっていることをきちんと構造化して見せてくれた。そうそう「IAの方法論(ツール)を守っても平均点」。そのとおり! - セミナー|IA2010キックオフセミナー個人的まとめ#IA2010[不問日報]
- 【レポート】「IA2010」キックオフセミナー「基調講演:エンタープライズ情報アーキテクチャ」 [concent]
- IA2010キックオフセミナー #1 [BLOG NDO]
冒頭の問題提起に"理想論であって、非現実的"とあるように、これまでのIAの情報は、断片的なものが多く、学ぶ人間の裁量やスキルに委ねる内容の物が多かったように思います。今回は、立ち上げから運用までの作業内容を詳細に解説で「これならできるでしょ」という内容(しかも低コスト!)。講演後「実践あるのみ」と力強く発信されてましたが、まずはやれる事からやってみないと。という気になりました。
講演の資料
- アジャイル時代のWeb解析事例: IAの仮説を検証しPDCAを回したWeb最適化の事例(Slideshare+PowerPointオリジナル)